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Vol.4 ダイヤは永遠。その可能性は無限? Vol.4 ダイヤは永遠。その可能性は無限?

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時計のデザインの一要素として、そのプロダクトに華やかさを与え、人びとに高揚感を与えてくれる宝石たち。その中でも、「ダイヤモンド」は圧倒的な存在感で、いつの時代も私たちを魅了しつづけてきました。そのダイヤモンドという最高の素材を使い、デザイナーはいかなる想像力をもって新たな輝きを追い求め、そして形にしていくのか? それを身につけた人を輝かせるプロダクトを生み出していくのか? デザイン統括部の和田実穂が語ります。(2017.10.27)

和田 実穂|Miho Wada
1989年、セイコーインスツル入社。現在セイコーウオッチ所属。1995年、セイコー ルキアの立ち上げを行う。以来、国内女性向けの製品を中心に担当。2007年より、クレドール・グランドセイコー等の高級品のデザインを手がけ、スタンダードからジュエリーウオッチまで、幅広く日本のモノづくりに関わる。

デザイナーもまた、ダイヤに恋をしている。

時計に用いられる宝石は、もちろん、ダイヤだけではありません。ルビーもあれば、サファイヤもあれば、エメラルドもある。でも、やっぱりダイヤモンドは圧倒的に特別な存在だという気がしますね。その美しさはもちろん。数十億年以上前に地球内部の自然活動で生み出された、「最も傷つきにくい」という性質を持つ宝石。そんな「時の流れ」や「永続性」をイメージさせることが、すでに時計との深い親和性を持っているようにも思えます。

時計メーカーのデザイナーにとって、「ダイヤモンドを使用した高級時計をデザインすること」は究極の憧れの一つなんですよ。時計のデザインラフを描いている時にも、ダイヤモンドから放たれる美しい光を描くのは、ワクワクする瞬間だったりします。

そう、みなさんがダイヤがきらめく時計を見て心を踊らせるように。私たちデザイナーも、その最高の素材をいかに散りばめていくかに思いを巡らせながら、愛しさと羨望の眼差しで、その宝石を見つめているということです。

デザインスケッチをする手の写真
デザイナーの感性と想像力を駆使して描きあげるデザインスケッチ。たとえ黒一色で描かれていても、そこからはダイヤモンドから放たれる強いきらめきが感じられる。
デザインスケッチをする手の写真
デザイナーの感性と想像力を駆使して描きあげるデザインスケッチ。たとえ黒一色で描かれていても、そこからはダイヤモンドから放たれる強いきらめきが感じられる。

時計とダイヤの新しい関係をデザインする。

ダイヤモンドとひとくちに言っても、自然界の産物であるがゆえに、その大きさや色合いはさまざまです。ダイヤはその表面の傷の少なさや、カッティングされたプロポーションの適切さ(光の反射の美しさ)で、いくつかのランクに分類されています。そして、「クレドール」や「グランドセイコー」で使用されるダイヤモンドは、「透明度」「傷の少なさ」「プロポーションの適切さ」において、一定の基準を満たしたものしか使用しないことになっています。

手の上に乗せた、たくさんのダイヤモンドの写真
手の上に乗せた、たくさんのダイヤモンドの写真
指の上に乗せた、一粒のダイヤモンドの写真
下の写真の指先できらめくダイヤは、直径1.7ミリ。このような小さなダイヤを、熟練の技で製品に精密にセッティングしていく。
指の上に乗せた、一粒のダイヤモンドの写真
下の写真の指先できらめくダイヤは、直径1.7ミリ。このような小さなダイヤを、熟練の技で製品に精密にセッティングしていく。

ダイヤの「大きさ」や「質」も重要ですが、その上で私たちが試行錯誤を重ねているのが、ダイヤモンドを「どの場所に、どんなふうに留めていくか」ということです。ダイヤモンドで、どんな個性を持った時計をデザインしたいのか? その造形のためには、どのようなダイヤを、どこに配置し、どんな風に留めればいいのか? それを突き詰めることで、時計とダイヤの新たなる関係、つまり、これまでには実現できなかった美しいデザインの時計が生まれていくんです。

セイコーで最も一般的なダイヤの留め方(セッティング方法)は「彫り留め」というものです。ダイヤを埋め込む窪みの周辺に「爪」と呼ばれる出っぱりを作って、カットされた宝石を埋め込んでいきます。そのあと、爪を内側に倒し込むことで石をしっかりと留めて、そのあと、爪を磨いて球状にすることで、宝石と爪が整然と美しく輝くセッティングです。でも、この留め方だけだとデザインの可能性が限られてきてしまう。だから、その「美しさの可能性」を広げるために、私たちデザイナーは新しいセッティング方法について、追求しつづけているのです。

①セット。ダイヤに最も光が当たるように整えた生地に、石を置く。 ②調節。ダイヤのテーブル面(一番平らな面)の高さ、傾きを調節。 ③留める。最適な位置まで慎重に爪を倒して、石を留めていく。 ④仕上げ。専用の工具を使って爪の上部を球状に磨き、仕上げ完了。
「彫り留め」のフローを図にしたもの。セッティング方法としては極めてシンプルだが、職人がどこまで細部にこだわって作業を行うかで、そのダイヤの輝きには大きな差が生まれていく。
①セット。ダイヤに最も光が当たるように整えた生地に、石を置く。 ②調節。ダイヤのテーブル面(一番平らな面)の高さ、傾きを調節。 ③留める。最適な位置まで慎重に爪を倒して、石を留めていく。 ④仕上げ。専用の工具を使って爪の上部を球状に磨き、仕上げ完了。
「彫り留め」のフローを図にしたもの。セッティング方法としては極めてシンプルだが、職人がどこまで細部にこだわって作業を行うかで、そのダイヤの輝きには大きな差が生まれていく。
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