1995年に誕生したルキアが目指したもの。
田中:今回は、今年(2020年)で25周年を迎えるルキアについてです。ルキアは1995年の発売以来、たくさんのユーザーに愛され、また社内においても歴代メンバーが愛情を持って育ててきたブランドです。ルキアのデザインディレクターの私・田中と、商品企画を担当する佐々木のふたりがメンバーを代表して話したいと思います。
佐々木:よろしくお願いします。まずは、このブランドが誕生したその経緯や、そこに込められた思いについて話したいと思います。
田中:ルキアが誕生した1995年は、働く女性や自分らしく生きる女性が増えていった時代で、そんな当時の女性たちのマインドに寄り添って生まれたブランドでした。

(左)佐々木舞香 | Maika Sasaki 2010年、セイコーウオッチ入社。国内営業を経て、マーケティング・商品企画へ。現在はルキアをメインに国内セイコーの商品企画業務を担当。

(左)佐々木舞香 | Maika Sasaki 2010年、セイコーウオッチ入社。国内営業を経て、マーケティング・商品企画へ。現在はルキアをメインに国内セイコーの商品企画業務を担当。
佐々木:当時の女性用ウオッチは「アクセサリー感覚の華奢なもの」が多かったようですね。そこに「実用性」と「媚びないファッション性」を両立させるデザインで、一石を投じたのがルキアでした。
田中:3種類あった初代ルキアのひとつが、このモデル(品番 SSVB001) です。当時の女性用ウオッチでは珍しい黒ダイヤル。そして最も特徴的なのが「多針モデル」であったことです。ターゲットイメージは「かわいい」というより「かっこいい女性」。この初代ルキアは当時の女性たちの心を掴みました。








佐々木:そして、更に多くの女性の支持を得たのが第2弾モデルです。その中のひとつとして発売されたのが、この赤ダイヤルのもの。(品番 SSVB015)ここには「ルキアの源流」ともいえる要素が、多く含まれていると感じます。
田中:そうですね。ケースはシャープでマニッシュな印象がありますが、それに対してダイヤルのアラビア数字にセリフ(文字の端につけられた飾り)が繊細に施されていて女性らしさがあります。また、ステンレススチールのベゼルには輝きを引き出すような細いラインのカットが施されています。ルキアはその後もずっと「輝き」を大切にしていますよね。
佐々木:女性らしさの中に、何か新しい要素を組み合わせる。この時は「マニッシュ」でしたが。そんな考え方が、ルキアには受け継がれていますね。
田中:この「赤ダイヤル」もブランドを象徴する要素のひとつですよね。赤いダイヤルでも、マニッシュなケースと組合せる事で決して女性っぽすぎない。そのバランス感で当時も女性たちの気持ちに寄り添っていたのですね。








レディダイヤの魅力と、ローマ数字の秘密。
田中:2017年から現在にかけて、強く打ち出しているのが「Lady Diamond」というシリーズです。今、多くの女性が目指しているのは、協調性や心に余裕のある「大人のレディ」。そういう人がカッコいい時代だという気持ちに寄り沿いたいという思いがありました。
佐々木:2016年に登場したこのモデル(品番 SSQV034)は、ローマ数字のインデックスと、ダイヤルを取り巻くように配置された6つのダイヤモンドが特長です。華やかでありつつ視認性のことも考えて、針の色や形状、インデックスがデザインされています。
田中:当時はピンクゴールドカラーが人気だったので「大人の女性に相応しいピンクゴールドを追求する」ということに挑みました。甘やかな印象になりすぎないように、ピンクゴールドカラーのボリューム感や配色のバランスなどを検証しながら、開発していきましたね。






佐々木:2019年に発売され、現在もルキアのメインモデルのひとつであるこの商品(品番 SSQW046)は、7時の位置にダイヤモンドを配置しています。これは「ラッキーセブン」という意味もあるのですが、左手につけた時、自分の胸に近い場所でダイヤが輝くことで、「あなたの心の一番近くで応援する」という意味もあります。
田中:ダイヤルのローマ数字も特徴的です。チーム内で「レディのふるまいとは何だろう?」って話をしている時に、「万年筆でさっとお礼状を書ける人」みたいな話が出て。そこからこの「万年筆で書いたようなオリジナルフォント」が生まれました。
佐々木:そうでしたね。このダイヤルの形状やブレスレット、そして「Lady Gold」と呼んでいるシャンパンゴールドカラーが相まって、エレガントさが際立つシリーズになったと思います。




ランクアップした、機械式のルキア。
佐々木:今年7月には「Japanese Beauty from GINZA(日本の素敵を銀座から)」というコンセプトでデザインされたシリーズを発売しました。ルキアはソーラー電波のものが多いのですが、このルキアは「機械式」です。世界中から審美眼のあるお客さんが集まる銀座。その街から発想を得たデザインで、「日本の美意識」を発信したいと考えました。
田中:各モデルのダイヤルの色には、「日本の美」に通じる意味合いが込められています。たとえば、この「紅(KURENAI)」(品番SSVJ001)は、口紅や真紅の花びらから想起された、情熱的な赤色。塗装などの加工を5回、6回と繰り返して仕上げています。この複雑な工程で、深みと複雑さを持った「陰りのある赤色」になる。このわずかな「陰り」が、日本の美意識に通じます。
佐々木:ダイヤル表面の模様は「折り紙」からヒントを得たものです。ストラップはクロコダイルを瑪瑙(めのう)の石で磨いて、艶のある質感に。表裏のカラーハーモニーも含めて、カラーテーマを表現しています。
田中:開発にあたっては、各部署のメンバーが集まってワークショップを実施して、社内コンペで広くアイデアを募ったりもしました。
佐々木:他にもいろいろと魅力的なアイデアが提案されていて、けっこう意見が割れましたね。
田中:そうでしたね。その中で「このデザインは潔くて良いね」と、多くの票が集まったのが、このデザインのベースとなった案でした。直線的でシャッキリとした面構成、そして大胆なダイヤルグラフィックが「潔い」と評価されたのだと思います。そして、この多面カットされたベゼルには、ルキアらしい「輝き」も表現されています。








ルキアのDNAと、これからのルキア。
佐々木:機械式のルキアは、ルキアのDNAを色濃く受け継いだデザインですね。ダイヤルの赤もルキアのブランドカラーですし。
田中:ベゼルオーナメントの面構成や、ダイヤモンドの台座など、デザインチームで検証を繰り返して、ルキアが大切にしている「輝き」を体現したウオッチです。もちろん、これから先もルキアの「輝きの追求」は続きます。
佐々木:25周年も続くブランドなので、ルキアは幅広い世代に知名度がある。でも、そこで立ち止まらず、新しいユーザーに新しい魅力を発信し続ける必要がありますね。
田中:「自分らしく生きていく」ことが大きな価値を持つ時代。数あるウオッチの中で、「私はこのルキアが好きだ!このルキアが似合う!」と思ってもらえるデザインを生み出すのが、自分たちの仕事ですね。
佐々木:あと、企画やデザインに関わる人が商品づくりを楽しんでいると、そのワクワク感はユーザーにも自然と伝わると思います。だから、そういうポジティブな気持ちで、魅力的なルキアを展開していきたいです。
田中:ルキアは、その時代の女性のマインドに寄り添うブランド。でも、寄り添うだけではなく、これからも女性たちをワクワクさせるような「ひとさじの攻め」を仕込みたいですね。