ウオッチの形や、数字の表記で、デザインの方向性が決まる?
佐藤:実は今回、この「By Seiko watch design」で、1000人に「腕時計に関するアンケート」を行いました。今日はそのアンケートの結果を踏まえながら、若手デザイナー2人と私で、ウオッチデザインについて語りたいと思います。
林:よろしくお願いします。そのアンケートの「腕時計を選ぶ時、最も重視するポイントは?」という設問で、最も多かった回答は「デザイン」だったようです。
小松:ウオッチデザイナーにとっては、嬉しいことですね。
佐藤:なので今日は、その誰しもが興味のあるウオッチデザインに、もっと詳しくなってほしいという考えのもと、ウオッチのデザインを基礎的な部分から紐解いていきます。
小松:デザインを深く知れば、ウオッチ選びはもっと楽しくなりますからね。
佐藤:最も基本的なところから入ると、まずウオッチは大きく「丸型」と「角型」に分かれます。「トノー型」もあるけど、これはまあ、角形の一種ですね。
小松:丸型と角形ならば、通常は、角形の方が「個性的な」デザインの方向になると思います。
林:そうですね。私も同じ感覚です。
小松:そもそも、丸型の懐中時計ができて、それが腕時計へと発展して、やがて独自のデザインを模索していく。その中で生まれたのが角型のデザインだと思うのです。
林:見やすさという実用性で考えると丸型が合理的だけど、あえて四角形にして個性を打ち出す。それは、装いを人に見てもらうことが前提。つまり、ドレスウオッチの傾向が強いということですね。
佐藤:ダイヤル上にある「数字」の表し方にも、大きく3つの方式がありますね。「ローマ数字」と「アラビア数字」、そして3つ目は数字ではない「バーインデックス」。
小松:これも、機能性を求めるなら、アラビア数字が優れていますよね。パッと読み取りやすい。これは、計測器的なイメージで、スポーティーなデザインになりやすいですね。
林:その逆に、ローマ数字は「古き良き時代」のウオッチという感じ。「クラシックな腕時計」と言われて、私がまず頭に浮かぶのは、トノー型でローマ数字のウオッチです。
佐藤:そうですね。他の要素がどうであれ、数字がローマ数字であれば、その時点である程度、ドレッシーな印象になりますね。バーインデックスは、クラシカルなのか、スポーティーなのか? これはちょっと難しい…。
林:うーん。アラビア数字やローマ数字に比べて、他のデザイン要素を邪魔しない、ということは言える気がします。あと、小さいダイヤルだと、バーインデックスは収まりが良い。
小松:ちょっと変化球だけど、たとえば、「ブライツ」のこのモデル(品番SAGZ097)を見ると、すべてがローマ数字じゃなくて、バーインデックスが組み合わさることで、少しモダンな印象。そういう「合わせ技」もあるんですよね。
林:確かに、このモデルの場合、全部がローマ数字だと、ちょっとくどい気もしますね(笑)。
佐藤:こんな感じで、みなさんもウオッチを買う時に「こんな場面で使いたい」というイメージがあるのなら、それに相応しいダイヤルはローマ数字か、アラビア数字かバーインデックスか、という意識を持つと、選ぶときの参考になるかもしれません。
新社会人の方へ。こんなウオッチは、いかがですか?
佐藤:ここから先は、具体的な人物像を設定して「こんなウオッチを買うと良いのでは?」というアドバイスを、多少の独断をまじえながら語っていきたいと思います。まずは新社会人のAさんです。
小松:Bさん(女性)には、アウトドア志向ということで、みんなメンズライクなウオッチを選びましたね。
林:アクティブなファッションに合うウオッチもたくさんありますから、レディースに限らず、メンズやボーイズサイズもぜひチェックしてほしいですね。
失敗しないウオッチ選び。その最大のポイントは?
佐藤:デザイナーの中でも、意見がけっこう割れるくらいだから。ウオッチ選びに「これが正解だ!」はないけれど。でも、ここだけは押さえておこう!というのは、あるかもしれない。
林:これは私見ですが、男性は女性に比べて「自分にそのウオッチが似合っているか?」という視点を持たずに選んじゃう人も多い気がします。
小松:モノだけ見て買ってしまったけど、つけてみたらなんかしっくりこないっていうパターン。逆に、本当は似合うのに、似合わないと思い込んでいる場合もある。まずはたくさん試着してみてほしいですね。「試着をすると、買わなくちゃいけないのかな?」と思う人もいるようですが、そんなことはないので。
林:店員さんはそんなこと、まったく気にしていません。試着は大事なポイントですよ。いろんなものを試着するうちに、自分に似合うウオッチがわかってくる。
佐藤:是非とも、そのウオッチをつけたい時の服を着て出かけて、試着した姿を鏡に映してみるのがいいと思います。実際つけてみると意外なデザインが似合っていたりするかもです。
小松:ちなみに僕は特に、ウオッチと靴下の相性を気にしていて、同色系で合わせたりするんです。靴下を50足ほど持っていて、ウオッチ全体の色味と合わせたり、差し色と合わせたりと、その日の気分で楽しんでいます。
佐藤:それはすごい! それはウオッチ選びというよりも、コーディネイトのことですね。とても大事ですね。靴下とのコーディネイトは初めて聞きました(笑)。
佐藤:僕は、普段メガネを掛けているのでウオッチの素材やカラーとの相性は意識しますかね。
林:私の場合、髪型を変えると、その髪型に似合う服を着るようになって。で、服装が変わることによって、似合うウオッチが変わってくる。そういう連鎖が起こったりもします(笑)。
佐藤:今日はデザイナーの視点で「似合うウオッチの選び方」をほんの少し語りましたが。ほかにもバンドの素材、文字盤の色、機能等様々な要素があります。これをきっかけに様々なウオッチを見て試着してみてもらえたらうれしいですね。それぞれの人に似合うウオッチがあると思います。
林:そうですね。私たちのような職業の人に限らず、ひとはけっこう他人がつけてるウオッチを見ているものです。楽しみながら自分らしい1本を見つけてほしいですね。