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Vol.9 視認性と、正確さと、操作性。ストップウオッチのデザイン。 Vol.9 視認性と、正確さと、操作性。ストップウオッチのデザイン。

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世界に誇るストップウオッチへ。
その挑戦は1960年代にはじまった。

これまで数々の国際的な競技大会で「公式時計」を担当してきたセイコー。その歴史は服部時計店(セイコーグループの前身)の社長・服部正次の指示のもと、「世界に誇るストップウオッチづくり」に挑むことになった1960年にまで遡る。そして現在まで、セイコーはその技術で、スポーツが生み出す感動的な瞬間を支えつづけてきた。あの日の挑戦によって大きな進化を遂げた、ストップウオッチの視認性・正確さ・操作性。それは、現在の私たちのデザインにも息づいている。

より正確で細かい測定のためにセイコーが開発した、ダイヤルの1秒間の刻みが5つに分割された「1/5秒積算式ストップウオッチ」。
完成したストップウオッチは、その性能の高さが認められ、国立物理研究所から「検査証明書」が発行された。
ストップウオッチ型の入力端末と、測定された数値を表示するための装置。セイコーの技術力を集結して、このような計測器が次々と開発されていった。

誤差のない計測を追求して生まれた、
「ハートカム機構」ストップウオッチ。

当時の計測は、現在とは異なる「手動式」。そこには誤差がつきもので、複数の測定員による測定値を平均して公式タイムとしていた。「でも、その誤差の原因は測定員ではなく、機械の側にあるのでは?」そんな仮説をもとに研究を進めて生まれたのが「ハートカム」という新方式の機構だ。時計の中で振り子の役割を果たすテンプに「ハートカム」を取り付けることで、「計測開始時のテンプ位置の一定化」と「タイムの正確な四捨五入」を実現。タイム計測の精度が一気に向上した。

こちらは「1/10秒」ごとに目盛がついたストップウオッチ。「1/5秒」のものと同様に、セイコー独自の「ハートカム」が搭載されている。
ストップウオッチのケースとりゅうずは、防水性に優れた特殊構造。競技中に雨や水しぶきを浴びても支障がないように設計されている。
「ハートカム」の設計図。測定開始時にテンプ位置の誤差をなくすことに加え、0.1秒より小さい数値を四捨五入する仕組を開発した。

配色、書体、ケースの形状…。
すべてのデザインは視認性のために。

また、デザイン的な特徴を見ていくと、そこには当時のデザイナーの「視認性への飽くなき追求」が読み取れる。白色のダイヤルに黒い文字を印刷。そのアラビア数字は、判読性に優れたゴシック系の書体が用いられている。ケースの縁が非常に細いのも、なるべく表示部分を大きくするという意図だろう。判読性を高めるため、秒ケースの端まで長く伸び、先端はダイヤルの側に少し曲げられている。これは、と目盛りの距離を縮めて、数値を読み取りやすくするためだ。

ダイヤルが僅かでも回転すると数値に誤差が生じてしまうため、一般的な時計とは違い、ダイヤルはネジでしっかり固定されている。
針の先端がダイヤル側に曲げられている。目盛りとの距離を近づけることで、より正確な測定を行うことができるデザインだ。
秒針の尾部に付けられているのは、のバランスを取るためのおもり。秒の先端と誤認しないよう、特徴的な菱形になっている。

スポーツ時計を追求して生まれたもの。
それを受け継いで、生まれていくもの。

1960年に「世界に誇るストップウオッチづくり」を目指してから、3年にわたる試行錯誤を繰り返したセイコー。その結果、1964年に行われる国際的な競技会のために、セイコーは9つのストップウオッチのほか、タイムの記録や着順の判定、観客への表示のために必要な「計時機器」を36種類・1278個も開発することとなる。そして、これらの計器づくりで培われた技術やデザインの思想は時として、半世紀以上の歳月を経た今も、セイコーのデザインに活かされている。

セイコーの計時機器を紹介した1964年当時の新聞広告。その数は合計1278個にものぼる。

ストップウオッチのほか、セイコーが生み出した数々の装置。1964年以降も、さまざまな世界的大会で活躍しながら、その性能とデザイン性を高めてきた。

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