SEIKO

by Seiko watch design
  • 日本語
  • English
メニュー

HomeStoriesVol.25 モンスターと呼ばれる時計はなぜ生まれ、どう進化したか。

2017年6月公開のコンテンツ「異名を持つ時計たち。」では、私たちセイコーが知らないうちに、セイコーファンから異名をつけられていたウオッチを紹介した。今回はその中のひとつ「モンスター」にフォーカスを当て、初代モンスターと呼ばれるウオッチをデザインした安藤人織と、四代目モンスターと呼ばれるウオッチをデザインした小松岳がその思想について語ります。

その大胆なデザインのきっかけは、「実用」のため

安藤:モンスターと呼ばれているウオッチが誕生したきっかけは、ダイバーズウオッチのあるべき姿の再構築を目指したところから始まります。はじめからクセの強い腕時計を目指したわけではなく、「ダイバーにとって使いやすい腕時計」を目指した結果、必然的に大胆なデザインになっていったという感じです。

小松:2000年に発売された初代(SKX781)モデルをはじめ、このシリーズは実はかなり使いやすさを考えてデザインされているんですよね。初代や二代目(SRP307)をはじめて見たとき、クセが強いように見えて実は機能的なところがいいなと思ったのを覚えています。

安藤と小松
安藤人織 | Hitoshi ANDO (写真・右)1992年、セイコー電子工業(現セイコーインスツル)入社。海外、国内向けのウオッチデザインを手掛けた後、機器などの他分野、関連事業のデザインも担当。現在はセイコーウオッチでデザイン開発のディレクターを務める。
小松岳 | Gaku KOMATSU (写真・左)2016年、セイコーインスツル入社。現セイコーウオッチ所属。セイコーブランドやALBA、ライセンスブランドなど幅広いジャンルのデザインに携わり、現在はPROSPEXをメインに担当している。
安藤と小松
安藤人織 | Hitoshi ANDO (写真・右)1992年、セイコー電子工業(現セイコーインスツル)入社。海外、国内向けのウオッチデザインを手掛けた後、機器などの他分野、関連事業のデザインも担当。現在はセイコーウオッチでデザイン開発のディレクターを務める。
小松岳 | Gaku KOMATSU (写真・左)2016年、セイコーインスツル入社。現セイコーウオッチ所属。セイコーブランドやALBA、ライセンスブランドなど幅広いジャンルのデザインに携わり、現在はPROSPEXをメインに担当している。

小松:例えば、特徴的な回転ベゼル。側面に大胆なえぐりが入っているのでとても回しやすくなっていますよね。

安藤:文字も大きすぎて、本来は60個あるべきベゼルの目盛りを踏んで隠しちゃってます。通常と逆の割り切りですね(笑)。インデックスも、見やすさを考えてできるだけ大きくしています。

小松:印象的なは、私の中で勝手に「モンスター」と呼んでいました(笑)。

安藤:いわゆる腕時計というよりは、ダイバーに重宝される「道具感」のあるものを目指していたんです。ただ、それだけではここまで人気に火がつかなかったと思います。

大胆なデザインが特徴の初代モデルは、狼男のワイルドな腕にも負けない存在感を放つ。
大胆なデザインが特徴の初代モデルは、狼男のワイルドな腕にも負けない存在感を放つ。
シリーズの始祖となるモデル(SKX779)。文字や針などの型破りなサイズ感も、出発点は「実用性」だった。
シリーズの始祖となるモデル(SKX779)。文字や針などの型破りなサイズ感も、出発点は「実用性」だった。
「目指したのはあくまでダイバーにとって使いやすいウオッチ。」そう語るのは、初代モデルをデザインした安藤。
「目指したのはあくまでダイバーにとって使いやすいウオッチ。」そう語るのは、初代モデルをデザインした安藤。

「怪物」が愛されるのはなぜか

小松:このモデルは道具としての魅力だけでなく、腕時計としての愛着や親しみもちゃんと感じられますもんね。例えばベゼルからケースにかけての深いえぐりは、「道具」としての魅力だけでない「愛嬌」を感じさせる要素になっていると思います。

安藤:実はケースベゼルは別々に作られていて、それらを後から合わせているんです。なのでそれぞれに入れたえぐり具合をピタリと合わせる難しさがあり、技術者の方にはかなりの苦労をかけてしまいました。愛嬌を出すのも楽じゃないですね。

小松:モンスターという英単語には「怪物」のほかに「異形」という意味もあります。一見すると怪物っぽい見た目ですが、それを構成するひとつひとつの要素が異形で、しかもそれが「愛嬌のある異形」というところで人気に火がついたのかもしれません。

異形なのにどこか憎めないのは、微かに人の温もりが感じられるからであろう。
異形なのにどこか憎めないのは、微かに人の温もりが感じられるからであろう。
側面の深いえぐりが印象的な、初代モデル(SKX781)。ベゼルとケースのえぐり部分は別々に作られ、組み立て時に位置合わせしているというから驚きだ。
側面の深いえぐりが印象的な、初代モデル(SKX781)。ベゼルとケースのえぐり部分は別々に作られ、組み立て時に位置合わせしているというから驚きだ。

安藤:それでいうと、ケースの「カタマリ感」も愛され要素のひとつでしょうか。腕時計の一般的な考え方でいくと「薄くて軽くつけやすいもの」を追求しますが、このシリーズの出発点はあくまで「ダイバーにとって使いやすい時計」。きちんと機能する道具として、必要な厚みを考えて素直にまとめていった結果、どっしりとしたデザインになりました。

時代に合わせてデザインは進化を遂げた。

安藤:小松さんは今回、四代目モンスターと呼ばれている時計をデザインしたわけですが、どのような点を意識しましたか?

小松:そうですね。四代目(SBDY033)をデザインするにあたり、まず 「このシリーズの大きな特徴はどこか?」 というところから考えました。これまでのお話にもあったように、初代モデルの誕生の原点は「使いやすさの追求」にあるので、要素を削ぎ落としていくことでさらに機能的に、かつ洗練された腕時計を目指しました。それは同時に、残した部分が際立ち「らしさ」がより強調されることにもつながりました。

ダイバーズウオッチとしての機能性の追求が、結果的に 特徴的なデザインにつながった。
ダイバーズウオッチとしての機能性の追求が、結果的に 特徴的なデザインにつながった。
四代目モンスターと呼ばれるウオッチ(SBDY033)。要素を削ぎ落とすことで、より洗練された印象に。
四代目モンスターと呼ばれるウオッチ(SBDY033)。要素を削ぎ落とすことで、より洗練された印象に。
四代目(SBDY033)をデザインした小松。シリーズの原点である「機能性の追求」とともに、現代とのチューニングも図っていったという。
四代目(SBDY033)をデザインした小松。シリーズの原点である「機能性の追求」とともに、現代とのチューニングも図っていったという。

安藤:しっかり「道具感」が残ってますよね。よくできてますね。

小松:ありがとうございます。例えば、最も特徴的な要素のひとつである側面のえぐりを浅くすることで、より現代的な印象を持たせました。結果的にそれが牙のような形状になり、モンスターっぽい感じも出すことができました。

安藤:よく見ると、数字の書体も微妙に違うんだよね。

小松:はい。ベゼルに大きく配置された数字も、シャープな部分と丸みを持たせる部分のメリハリを意識し、強さを残しながらも現代的な印象にまとめています。

安藤:当時の技術ではまだ今のようにエッチングで文字を深く掘ることはできなかったので、初代モデルにはできなかったデザインですね。

小松:そういったことも含め、このシリーズは時代とともに進化を遂げた腕時計であると言えますね。

安藤:四代目はケースの形状も特徴的ですね。一般的な腕時計のの断面形状は台形であるのに対し、初代モデルは「カタマリ感」を出そうとできるだけ垂直な筒状になるようにデザインしていました。ところが、四代目はすり鉢状になっています。

小松:そうなんです。「カタマリ感」も初代から引き継ぐべき重要なポイントなので、それは残しつつさらに現代的にみせようと考え、すり鉢状にすることで「洗練されたデザイン」を目指しました。

「どっしりしたカタマリ感」は、「すっきりしたカタマリ感」へ。文字の太さやケースの形状など、所々に時代を感じさせる変化が見られる。
「どっしりしたカタマリ感」は、「すっきりしたカタマリ感」へ。文字の太さやケースの形状など、所々に時代を感じさせる変化が見られる。
初代に比べてえぐりを浅くした結果、四代目は鋭い牙のような見た目に。
初代に比べてえぐりを浅くした結果、四代目は鋭い牙のような見た目に。
並べてみると、初代のDNAを四代目がしっかりと受け継いでいるのがわかる。世代を超えて愛される理由かもしれない。
並べてみると、初代のDNAを四代目がしっかりと受け継いでいるのがわかる。世代を超えて愛される理由かもしれない。

安藤:2000年代は特に機能的な腕時計が求められていた時代なので「道具感」を意識していましたが、今は「世界観」に共感して商品を選ぶ傾向にあるのかもしれません。このシリーズはあらゆる部分でギリギリを攻めているので、ユーザーにもその世界観がはっきり伝わり、共感いただいたお客様には特に愛されているのかもしれませんね。

小松:今のモデルを入り口に歴代のモデルたちを知っていただき、どちらも好きになってもらえればこれほど嬉しいことはありません。

安藤:そもそも「モンスター」とはファンの間での呼称なので、私たちでさえ明確な定義はありません。過去から現在にかけてのデザインの違いを見つけながら、定義づけや名付けを楽しんでほしいですね。

歴代モデル

派生モデル

このページをシェア