セイコーのオリジナリティを体現した唯一無二のデザイン。その形状から「ツナ缶」のニックネームで呼ばれ、1975年の誕生以来、長きにわたり、ウオッチファンから愛されている。
[ 検証 ] なぜ、その異名が付けられたのか? TUNA-CAN篇
文珠川:まずは「TUNA-CAN」と呼ばれているこの外胴プロテクターつきダイバーズ。ニックネームで呼ばれている腕時計の中で最も知られているのがこの時計ですよね。単純に円筒をぶつ切りにしたようなシンプルな形が似ているように感じさせますよね。ボリューム感があり、径と厚みのバランスがツナ缶っぽい。時計のベゼルが金属色なのも、ツナ缶の蓋を連想させますね。それとツナ缶を逆さにすると、底の丸みがこの時計の造形に通じているようにも見えます。
岸野:オリジナルのこの時計は、裏ぶたがなく、表側からしか開かない「ワンピースケース構造」。耐衝撃や耐浸水を極限までに追い求め、それを実現したスペックを兼ね備えています。
文珠川:そして、それこそがツナ缶を想起させるのかも知れない。時計の側面を覆う「外胴プロテクター」は、セイコー独自の技術や思想から生まれた特殊な形状です。缶詰がその中身を保護しているように、“外胴”も時計本体をしっかりと保護しています。
岸野:微妙なカーブとか反りとかアールの美しさとは一線を画した、「筒とバンド」といったシンプルな構成は、まさに機能美。全くデザインされていないような感じがしますが、よくよく見るとあちらこちらにヒトに優しいディテールが盛り込まれています。
文珠川:それって、プロダクトデザインにとって非常に重要な要素ですよね。研ぎ澄まされた機械をどうヒトにフィットさせるか?デザイナーそれぞれの腕の見せどころですよね。
岸野:それを踏まえてディテールをあらためて見ていくと、良く考えられている形ですよね!単純に腕上の缶ではなく、肌にあたるところはスムースに面をとってある!
文珠川:でも、どう見てもツナ缶ですよ。これは。ある意味、この「TUNA-CAN」という異名は、付けられるべくして付いたという気もしますね(笑)。
ひと目見たら忘れることのない怪物級の存在感。機能とデザインが融合して出来上がったインパクトある造形と視覚的な強さが多くのファンを惹きつける。
[ 検証 ] なぜ、その異名が付けられたのか? MONSTER篇
文珠川:「MONSTER」と呼ばれているモデルは、文字盤のデザインがすごいですよね。怪物が歯をむき出しにして口を開いているように見えるからかな。砂漠の中を縦横無尽に動き回るワーム生物のような。そうやって見ていくと、ギザギザしたベゼルは、恐竜の骨ばった外皮のような印象を受けます。
岸野:時針もカギ爪のように見えてきますね。横から時計を見ると、太い臼歯(きゅうし)が噛み合っているように見えなくもない。また、ベゼル上のアラビア数字や目盛のデザインに迫力を感じます。
文珠川:ダイヤルの長いミニットマークが漫画の効果描写のように見えて、さらに迫力を感じさせる。ガーっと襲ってくるときに出てくるあの描写です。まさにモンスターという異名がふさわしいですよね。
岸野:ダイヤルの中心に力が集中してきているこの感じ。こういうデザインって他に無いと思うんです。
文珠川:確かに。しかも形状そのものもモンスターって感じだけれど、存在自体もモンスターなのかもしれないですよね。色や仕上げを変えながら、いまだに売れ続けているんですよね。まさにモンスター的な存在と言えるんじゃないでしょうか。
岸野:デザインの各要素がいい意味で大袈裟で、存在感が強いですよね。それがモンスターっぽさにつながるんでしょうね。
文珠川:ホント!アクが強い!