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Vol.6 この世界は、光と影だ。 Vol.6 この世界は、光と影だ。

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「枯山水」と、「光と影」。

庭園に石を置いたり砂などを敷き詰めて、立体的なうねりをつくり、そこに生まれる凹凸と陰影によって風景や水の流れを表現していく枯山水。それはまさに、今回のテーマである「光と影」に通じる日本文化の様式のひとつといえます。

文字盤の中に配置された略字や窓枠などのパーツと、文字盤に施された繊細な立体模様の関係も、さながら枯山水の石と砂の模様の関係のようにも見えるのではないでしょうか。

また、文字盤にあけられた丸い穴から、脈動する機械式ムーブメントの動きを見ることができるものもあります。

プレザージュ (品番SRRY020)の正面写真 黒色ダイヤル、丸型。
文字盤に丸く開いた窓から、ムーブメントの一部を眺めることができる。誰しも脈動するその動きに魅了され、時間の過ぎるのを忘れてしまうだろう。(SRRY020)
プレザージュ (品番SRRY020)の正面写真 黒色ダイヤル、丸型。
文字盤に丸く開いた窓から、ムーブメントの一部を眺めることができる。誰しも脈動するその動きに魅了され、時間の過ぎるのを忘れてしまうだろう。(SRRY020)

これは文字どおり、茶室などに設けられた「円窓」のように、文字盤を通り抜けた先にある「ムーブメント」という風景を切り取って眺められる「窓」です。茶室の円窓は、開け方によって見える風景を変化させたり、半分閉じられた障子に木々の枝が投影されるのを楽しんだりするものだそうです。

正面から差し込む光を反射して輝くムーブメント、逆に裏側から透過する光によって影絵のように見えるムーブメント、その「窓」のアレンジ次第で腕時計の中に見える風景もさまざまに変化します。

品番SRRY020のダイヤル拡大写真。穴からムーブメントが見える。
日本庭園に例えるなら、丸い窓によって、文字盤とその背後にあるムーブメントをとり込み一体化させた「借景」のようだ。
品番SRRY020のダイヤル拡大写真。穴からムーブメントが見える。
日本庭園に例えるなら、丸い窓によって、文字盤とその背後にあるムーブメントをとり込み一体化させた「借景」のようだ。

「ロジカル」も「計算外」も、デザイン。

プレザージュが目指しているのは、機械式腕時計であるということにこだわり、日本人のセンスや感受性を盛り込み、そして「匠の技」などの日本のものづくりを真摯に追求し、腕時計というプロダクトを通じてこれらを世界に発信することです。

その「匠の技」は、腕時計内部の機械だけではなく文字盤などの外装にもおよびます。プレザージュでは文字盤に、日本の匠の技である本物の「琺瑯(ほうろう)仕上げ」や「漆(うるし)塗り」を施したものもあります。それらの文字盤の表面には、なまめかしい色つやとともに匠の手仕事の痕跡である繊細な陰影が宿り、私たちの目と心を魅了します。

プレザージュ  琺瑯ダイヤル(品番SARW035)のダイヤル拡大写真
職人の手仕事の痕跡である微妙なうねりを持つ琺瑯(ほうろう)文字盤。プレザージュにとってはそれもデザインの一部だ。(SARW035)
プレザージュ  琺瑯ダイヤル(品番SARW035)のダイヤル拡大写真
職人の手仕事の痕跡である微妙なうねりを持つ琺瑯(ほうろう)文字盤。プレザージュにとってはそれもデザインの一部だ。(SARW035)

そしてこれらは大量生産が難しいうえに、品質の「バラつき」を抑え込む高度な技術が必要とされます。同じ職人が作っても、ひとつとしてまったく同じものは生まれません。また、デザイナーが頭で思い描いていたことを超えた、計算外なことも起こります。試作品があがってみると、あれ、想像と違うな、ということも多々あります。

しかしこうした手仕事の要素を盛り込むことを決めた時点で、その予想外の結果やバラつきも含めて、それはデザインの一部であるということもできます。ロジカルな計算の上に熟慮に熟慮を重ねたにもかかわらず計算外なことや細かい揺らぎが起こる。そしてまた、それを踏まえてロジカルに考えを進めていく。そんなロジカルと計算外の繰り返し、試行錯誤の積み重ねによって、デザイナーは理想のデザインを生み出しているのです。

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