SEIKO

by Seiko watch design

  • 日本語
  • English
メニュー

Vol.2 異名を持つ時計たち。 Vol.2 異名を持つ時計たち。

HomeStoriesVol.2 異名を持つ時計たち。

私たちセイコーの知らない場所で、知らないうちに、セイコーファンから商品名や品番とはまた別の「異名」で呼ばれ、愛される時計たちが存在している。「TUNA-CAN」「MONSTER」「SAMURAI」「TURTLE」…など。もちろん、私たちが企業としてそのような名称を掲げているわけではない。自然発生的にそうなったのだ。でも、一体なぜ? デザイン統括部の文珠川智と岸野琢己が想像を交えながら語ります。(2017.06.10)

文珠川智 | Satoru Monjugawa
1992年、セイコーエプソン入社。現在セイコーウオッチ所属。2013年にEurope / U.S.A.向けセイコーブランドのデザイン・ディレクターに就任。現在、PROSPEXを中心に、海外展開されているセイコーブランド全般のデザイン・ディレクションを担当している。
岸野琢己 | Takumi Kishino
2006年、セイコーウオッチ入社。Europe / U.S.A.向けセイコーブランドや国内若者向けのWIREDブランドなど幅広いジャンルのデザインを担当後、現在は国内向けブランドを手がける。

異名を持つ時計たち TUNA-CAN(ツナ缶)篇/ツナ缶の中に手を入れると時計のツナ缶が出てくるアニメーション

セイコーのオリジナリティを体現した唯一無二のデザイン。その形状から「ツナ缶」のニックネームで呼ばれ、1975年の誕生以来、長きにわたり、ウオッチファンから愛されている。

[ 検証 ] なぜ、その異名が付けられたのか? TUNA-CAN篇

文珠川:まずは「TUNA-CAN」と呼ばれているこの外プロテクターつきダイバーズ。ニックネームで呼ばれている腕時計の中で最も知られているのがこの時計ですよね。単純に円筒をぶつ切りにしたようなシンプルな形が似ているように感じさせますよね。ボリューム感があり、径と厚みのバランスがツナ缶っぽい。時計のベゼルが金属色なのも、ツナ缶の蓋を連想させますね。それとツナ缶を逆さにすると、底の丸みがこの時計の造形に通じているようにも見えます。
岸野:オリジナルのこの時計は、裏ぶたがなく、表側からしか開かない「ワンピースケース構造」。耐衝撃や耐浸水を極限までに追い求め、それを実現したスペックを兼ね備えています。
文珠川:そして、それこそがツナ缶を想起させるのかも知れない。時計の側面を覆う「外プロテクター」は、セイコー独自の技術や思想から生まれた特殊な形状です。缶詰がその中身を保護しているように、“外”も時計本体をしっかりと保護しています。

時計を見つめる文殊川と岸野の写真
「TUNA-CAN」のニックネームを持つ時計を手にして、真剣な表情でそれを見つめる文珠川(右)。ちなみに、岸野(左)の手元に置かれているのは、スーパーで売られている本物の「ツナ缶」である。
時計を見つめる文殊川と岸野の写真
「TUNA-CAN」のニックネームを持つ時計を手にして、真剣な表情でそれを見つめる文珠川(右)。ちなみに、岸野(左)の手元に置かれているのは、スーパーで売られている本物の「ツナ缶」である。
分解図(上から、アクリル表示板、回転ベゼル、ベゼルパッキン、ガラス固定リング、ガラス、L字型パッキン、外胴固定ねじ、外胴、ダイヤルリング、ダイヤル、内胴、りゅうず)
「TUNA-CAN」と呼ばれるダイバーズウオッチを分解した図。これらの部品の中に、多くの「特許技術」が含まれている。これらのパーツを「気密性」を保つように組み合わせることで、高性能なダイバーズウオッチが生まれる。
分解図(上から、アクリル表示板、回転ベゼル、ベゼルパッキン、ガラス固定リング、ガラス、L字型パッキン、外胴固定ねじ、外胴、ダイヤルリング、ダイヤル、内胴、りゅうず)
「TUNA-CAN」と呼ばれるダイバーズウオッチを分解した図。これらの部品の中に、多くの「特許技術」が含まれている。これらのパーツを「気密性」を保つように組み合わせることで、高性能なダイバーズウオッチが生まれる。

岸野:微妙なカーブとか反りとかアールの美しさとは一線を画した、「筒とバンド」といったシンプルな構成は、まさに機能美。全くデザインされていないような感じがしますが、よくよく見るとあちらこちらにヒトに優しいディテールが盛り込まれています。
文珠川:それって、プロダクトデザインにとって非常に重要な要素ですよね。研ぎ澄まされた機械をどうヒトにフィットさせるか?デザイナーそれぞれの腕の見せどころですよね。
岸野:それを踏まえてディテールをあらためて見ていくと、良く考えられている形ですよね!単純に腕上の缶ではなく、肌にあたるところはスムースに面をとってある!
文珠川:でも、どう見てもツナ缶ですよ。これは。ある意味、この「TUNA-CAN」という異名は、付けられるべくして付いたという気もしますね(笑)。

時計のツナ缶と「ツナ缶」の比較写真。横に並べたり、「ツナ缶」腕に乗せたり。
いざ、時計の「TUNA-CAN」と「ツナ缶」を並べて比較するうちに、ふと、今まで気づかなかった新しいことに気づかされる。デザインの世界は奥深い。
時計のツナ缶と「ツナ缶」の比較写真。横に並べたり、「ツナ缶」腕に乗せたり。
いざ、時計の「TUNA-CAN」と「ツナ缶」を並べて比較するうちに、ふと、今まで気づかなかった新しいことに気づかされる。デザインの世界は奥深い。

異名を持つ時計たちMONSTER(モンスター)篇/地面を掘り進む怪物と時計のモンスターのアニメーション

ひと目見たら忘れることのない怪物級の存在感。機能とデザインが融合して出来上がったインパクトある造形と視覚的な強さが多くのファンを惹きつける。

[ 検証 ] なぜ、その異名が付けられたのか? MONSTER篇

文珠川:「MONSTER」と呼ばれているモデルは、文字盤のデザインがすごいですよね。怪物が歯をむき出しにして口を開いているように見えるからかな。砂漠の中を縦横無尽に動き回るワーム生物のような。そうやって見ていくと、ギザギザしたベゼルは、恐竜の骨ばった外皮のような印象を受けます。
岸野:時もカギ爪のように見えてきますね。横から時計を見ると、太い臼歯(きゅうし)が噛み合っているように見えなくもない。また、ベゼル上のアラビア数字や目盛のデザインに迫力を感じます。

壁に貼られた怪物のイラストと、時計の写真を見比べる文殊川と岸野
「MONSTER」と呼ばれる時計たちについて考察。どの部分が、どうモンスターっぽいのか?「MONSTER」はその発展系も多いだけに、その議論はなかなか尽きない。
壁に貼られた怪物のイラストと、時計の写真を見比べる文殊川と岸野
「MONSTER」と呼ばれる時計たちについて考察。どの部分が、どうモンスターっぽいのか?「MONSTER」はその発展系も多いだけに、その議論はなかなか尽きない。

文珠川ダイヤルの長いミニットマークが漫画の効果描写のように見えて、さらに迫力を感じさせる。ガーっと襲ってくるときに出てくるあの描写です。まさにモンスターという異名がふさわしいですよね。
岸野ダイヤルの中心に力が集中してきているこの感じ。こういうデザインって他に無いと思うんです。
文珠川:確かに。しかも形状そのものもモンスターって感じだけれど、存在自体もモンスターなのかもしれないですよね。色や仕上げを変えながら、いまだに売れ続けているんですよね。まさにモンスター的な存在と言えるんじゃないでしょうか。
岸野:デザインの各要素がいい意味で大袈裟で、存在感が強いですよね。それがモンスターっぽさにつながるんでしょうね。
文珠川:ホント!アクが強い!

時計の「MONSTER」の正面写真と側面写真/漫画の効果線のイラスト/恐竜の骨と牙の写真
「恐竜の歯」や、さらには「漫画の効果線」などを資料にして。「MONSTER」と呼ばれる時計たちのデザインに関する仮説が、ふたりから披露されていく。
時計の「MONSTER」の正面写真と側面写真/漫画の効果線のイラスト/恐竜の骨と牙の写真
「恐竜の歯」や、さらには「漫画の効果線」などを資料にして。「MONSTER」と呼ばれる時計たちのデザインに関する仮説が、ふたりから披露されていく。
このページをシェア