
(中)河西由美|Yumi Kasai 1988年、セイコーインスツル入社。2015年よりセイコーウオッチへ出向し、2022年よりセイコーウオッチ所属。現在はセイコー ルキアのデザインを担当している。好きなお花はミモザ。
(右)石井菜月 | Natsuki Ishii 2019年、セイコーウオッチ入社。現在はセイコー ルキアのデザインを担当している。好きなお花はアンスリウム。

(中)河西由美|Yumi Kasai 1988年、セイコーインスツル入社。2015年よりセイコーウオッチへ出向し、2022年よりセイコーウオッチ所属。現在はセイコー ルキアのデザインを担当している。好きなお花はミモザ。
(右)石井菜月 | Natsuki Ishii 2019年、セイコーウオッチ入社。現在はセイコー ルキアのデザインを担当している。好きなお花はアンスリウム。
女性は、成長していく花である。
田中:2023年から始まった「LUKIA Grow」というコレクションは、しなやかに成長していく女性を花に見立て、その女性が美しく花開くことを思い描いています。
河西:この「LUKIA Grow」、年ごとにテーマがあるんですよね。2024年は自分らしく美しく開花していく女性を描いた「Blossom」、ルキア30周年の2025年は、一人ひとりが自分の魅力を開花させてほしいと願いを込めた「Flower Garden」となっています。LUKIA Growを手に取ってくださった方が、しなやかに成長して美しく開花し、色とりどりの花を咲かせるように、一人ひとりが自分の魅力を開花させて欲しい、そんなストーリーになっています。
田中:当初は、このようにストーリーを描くことは考えていなかったんです。ただ、初年度の「Grow」がとても好評だったこともあって。コレクションを通してストーリーを展開すれば、それがお客様自身のストーリーとも重ねられていくので、いいんじゃないかと考えました。
石井:「花」をモチーフとしたコレクションであることも特徴ですよね。バリエーションが出しやすく、デザイン展開もしやすい。そのため、いろんなタイプの女性に「これは私のモデルだ」と感じてもらえるウオッチを提供できるのではと思っていました。
甘すぎず。大人っぽく。カラーリリー
河西:初年度の「Grow」を担当したのは田中さんと石井さんでしたよね。
石井:はい。「Grow」ではモチーフのひとつにカラーリリーを採用しました。お花の種類はいくつか候補があったんですけど、大人っぽさや、凛とした美しさみたいなものを意識しました。


河西:「SSVW205」は、まさに「カラーリリーと言えばコレ!」、というカラーリングですね。


石井:そうですね。ダイヤルは白をベースに、中心部は黄色いグラデーションを使ってカラーリリーの色合いを表現しました。どんなファッションにも合わせやすいカラーリングになっていると思います。
田中:カラーリリーをモチーフにしたもうひとつのモデル「SSQW072」は、新コレクションとして今までにない色を入れたいという話になり、白蝶貝にピンクブラウンのダイヤルを試してみたんです。これが思いのほか良くて、社内の女性にも大好評でした。


石井:ケースの縁も思い切ってピンクゴールドを採用していますが、意外と甘くなりすぎず、洗練された落ち着きが感じられて新鮮でした。ルキアとしては珍しいカラーリングになりましたが、いいデザインにまとまったかなと思います。
田中:そろそろピンクゴールドは年齢的に合わないと感じてくる世代へ、大人っぽいピンクゴールドの使い方の提案になったようで、かなり人気が出ました。
石井:細かいところでは、ダイヤルの左上と右下に花びらの線をイメージしたラインを入れています。また、りゅうずの形もつぼみから開花するようなデザインになっています。



河西:このりゅうずのデザイン、すごく斬新だと思いました。まさに「Grow」を象徴するようなデザインですよね。
田中:実は最近、姪にルキアを買ったんですけど。それがまさに「Grow」のトノー(樽)型のモデルで。それをつけて彼女らしく成長していってくれたらうれしいなと思います。
フレッシュと、ラグジュアリーと。ピオニー
田中:2024年は「Blossom」をテーマにデザインを展開しています。開花ということで、みずみずしく咲くピオニー(芍薬)の花を当初からイメージしていました。「SSQW081」は、それを象徴するモデルになったと思います。


河西:たしかに、ケースの丸みを帯びたフォルムだったり、バンドの先端部分が外に開いていたり、フォントも「Grow」のときより角度をつけて開花したデザインになっています。いろんなところにピオニーを思わせる要素が散りばめられていますね。




田中:ダイヤルには、ふっくらとした雫(しずく)のような形状の「ドロップダイヤル」を採用しました。このために関連部門と開発を進めてきましたので、それがテーマを具現化するような商品づくりにつながって良かったです。
石井:この「SSQW081」が朝の光のなかで咲くピオニーだとするなら、もうすこしジュエリーテイストなものをということで開発された「SSWA002」は、ちょっと日が落ちてきた、夕方の光のなかで咲くピオニーのイメージです。


河西:この、アナログクオーツだからこそ実現できる小さなサイズ感がいいですよね。



田中:今回はアナログクオーツによる小ぶりな形状やダイヤルの美しさを優先し、ジュエリー感を高めたものをラインアップに加えました。これまで主にソーラー電波で展開していたルキアの、商品の幅を広げることにもつながりました。
節目を彩る、祝福のエレメントたち。
田中:ブランド30周年を迎えた2025年のテーマは、「Flower Garden」です。このテーマは、前年「Blossom」をテーマに掲げたときからすでに構想していたんです。
石井:「それぞれの女性が自分らしく花を咲かせてフラワーガーデンになる」というストーリーは、30周年というお祝いのタイミングにもすごく合っていると思いました。「SSQW091」は、まさにそのストーリーを象徴的に表していますよね。


田中:6時位置に埋め込まれているダイヤの台座がお花の形をしているのですが、そこからお花が舞い上がっていく様子を、ダイヤル上に「隠し印刷」した様々なお花のシルエットで表現しています。実は裏テーマとして、30周年を迎えたルキアがここからまた花開いていく、というストーリーも重ねているんです。




石井:他にも30周年の要素はいろんなところで表現しています。限定品として開発した「SSQW094」では、3匹の蝶(6時位置に2匹、カレンダー上部に隠し印刷で1匹)が羽ばたいていますし、30日になるとカレンダー表示にハートが現れる仕様になっていて。ここって普段はデザインする領域ではないので、まさか提案した案が実現するとは思いませんでした。
河西:「SSWA012」は、ルキアで10年以上のロングセラー商品(SSVW214)のデザインをベースにしているんですよね。


田中:はい。2011年に登場して以降、常に人気のソーラー電波モデルを元にしています。視認性がよく、見るたびにハッピーな気持ちになれるそのデザインを、クオーツならではのジュエリー感のあるミニサイズで展開しました。こちらはHappy Collectionとして展開しています。


河西:ダイヤルベースは、リラックス感のあるペールトーンのカラーと、開花しているような型打模様で輝きと質感を演出しています。1時と7時の位置にはダイヤをつけて特別感を演出しています。この台座をはじめインデックスやりゅうずも、幸福の象徴である四葉のクローバーをイメージしています。


成長し続ける。女性も、ルキアも。
河西:ルキアは人生の節目で出会うことの多いブランドだと思います。30年続くブランドなので「昔、母がルキアを付けていて、とても印象に残っています」とか、「親子で使っています」というエピソードもよく耳にします。そんなふうに親から子へと受け継がれる、また娘と母で共有してもらえるような、「世代の架け橋」になる色あせないブランドにしていきたいですね。
田中:私がセイコーに入社したいと思うきっかけになった広告が、ウオッチをとても大人っぽく見せていたんです。それを見たときに、時計を手にすることは「大人になったな」と感じる出来事のひとつだと思うようになりました。私があのとき感じたワクワク感や憧れのようなものを、これからルキアを手に取る人にも、ぜひ提供し続けていきたいです。
石井:私の母は、私がデザイナーになって初めてデザインしたルキアのウオッチを買ってくれました。ただ、いろいろ理由をつけてあまり身につけてくれなくて(笑)。今後は、母というひとりの女性に寄り添うウオッチもデザインしたいというのが、密かな目標になっています。
田中:いいですね。ウオッチって「腕」につけるものではあるんですけど、同時に「心」につけるものでもあると、最近改めて感じています。ルキアはコレクションを複数展開しているので、ぜひ自分の心に似合うデザインを見つけて、人生の相棒にしていただけたらうれしいです。
