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Vol.5 すべての色に理由あり。 Vol.5 すべての色に理由あり。

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中近東の人たちが「金色」を好む理由を探る。

この製品(SNKE56K1)は、ダイヤルはもちろん、バンドも含めて時計全体が金色に光っています。こういった金色の時計は、中近東や南アジアの人に人気があって、本当によく売れている印象があります。

中近東の人たちは、金に対するイメージが日本とは根本的に違います。日本だと金色は「お金持ちの色」という印象だけど、中近東では金製品を取扱ったお店が普通に町にあって、庶民もそれに馴染んでいる。ゴールド=「お金持ちの色」じゃなくて、みんなに開かれた色なんです。

品番SNKE56K1の正面写真。ダイヤル、バンド全体が金色
品番SNKE56K1の正面写真。ダイヤル、バンド全体が金色

その一方で、ヨーロッパの人たちは、物質として金じゃないのに金色をしているものを、あまり喜ばない。「金色のものは、純金であるべき」という考えがあるようです。また、ケースダイヤルバンドも金色というものは少ない。金色のケースに、シルバーダイヤル、そしてクロコダイルの黒レザーバンド。それが、欧州での金時計のスタンダードですね。

「黄金の国ジパング」と言われたくらい、古来から日本人と金の親和性は高いと考えられますが。でも、実際には日本では金色の時計はあまり売れません。「謙虚さ」を重んじる日本人には、いわゆる「成金」のイメージが強いため、敬遠されがちということがあるのかもしれませんね。

中近東の服装をした男性と品番SNKE56K1
ダイヤルの色の好みは、そのお国柄によって、思った以上に違ってくる。中近東の人たちが金色の腕時計を腕に巻くと、確かに、似合っている気がしてくるから不思議だ。
中近東の服装をした男性と品番SNKE56K1
ダイヤルの色の好みは、そのお国柄によって、思った以上に違ってくる。中近東の人たちが金色の腕時計を腕に巻くと、確かに、似合っている気がしてくるから不思議だ。

「緑は売れない」の定説を覆しつづける時計。

一方、こちらはアルピニストという登山用の時計(品番SARB017)。ご覧のように、ダイヤルは深い緑色です。実を言うと、緑色のダイヤルをした時計は、なかなか売れないんです。でも、この緑色のアルピニストだけは例外的に、発売から20年以上にわたり売れ続けています。

デザインの要素を分解してみると、「山登り」だから森のイメージで緑のダイヤル。で、堅牢性も必要だからステンレスのケース。トレッキングの時の服や靴と相性のいい茶色の皮ベルト。特に奇をてらった要素は何もない。

アルピニスト(品番SARB017)の正面写真。緑色のダイヤル、丸型。
これが時計界の常識を覆しつづける時計「緑のアルピニスト。」登山用の時計だけあって、「簡易方位計」を内蔵。山の中でも「東西南北」を知ることができる。
アルピニスト(品番SARB017)の正面写真。緑色のダイヤル、丸型。
これが時計界の常識を覆しつづける時計「緑のアルピニスト。」登山用の時計だけあって、「簡易方位計」を内蔵。山の中でも「東西南北」を知ることができる。

ただ、ウオッチデザイナー的な視点で見てみると緑色の文字盤に加え、不思議なの形や、様式にとらわれない金色の使い方など、不思議な魅力が満載です。デザイナーの一見地味ともとれる要素の積み重ねが細部まで行き届き、奇抜でありつつも調和のとれた、完成度の高い時計。そういう時計が他にはあまりなくて「唯一無二の存在」になって売れ続けている。そんな気がしています。

最初にアルピニストが発売された時は、黒と白と緑の3種類がありました。でも、本来は人気がある色であるはずの黒と白は、それほど売れることなく市場から消えて、緑だけが生き残りました。そこから多少のマイナーチェンジはあっても、大きなデザインの変化は起こることなく、いまも売れつづけている。そんな不思議な時計です。

このように、時計の色にまつわるデザイナーの試行錯誤は尽きることなく、いつの時代も私たちの好奇心をかきたててくれます。これからも、その色の可能性を追求し続けていきたいと思います。

アウトドアのイメージ写真。山々、登山靴、ステンレスのコップと緑のアルピニスト。
「すべての色に理由がある」を具現しつつ、唯一無二の存在である「緑のアルピニスト」。今後も、この時計は人々に愛されつづけることだろう。
アウトドアのイメージ写真。山々、登山靴、ステンレスのコップと緑のアルピニスト。
「すべての色に理由がある」を具現しつつ、唯一無二の存在である「緑のアルピニスト」。今後も、この時計は人々に愛されつづけることだろう。
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