by Seiko watch design

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時計づくりは「化粧」である。 by SeikoDesign Vol.3

完成して気がついた。これって、ジェルネイルの艶めき!

この時計(品番SSQV014)は、ジェルネイルの艶めきや色っぽさを感じさせるデザインです。ですが、これは最初から「ジェルネイルのような質感を作ろう」という発想で作り出したものではありません。目指したのは、これまでにない「艶めき」や「うるおい」に満ちた時計をデザインするということでした。

そのために、まずベースとなる透明の素地の、表面ではなく裏面にピンクの塗装をし、それを半透明の薄い「ハーフミラー」の上に重ねました。そして、ダイヤルの上面には細かい凹凸をつけています。光が平面ではなく凹凸のあるダイヤルで反射するので、平面的なダイヤルだけど、何となく丸みを帯びているようにも見える。奥行きを感じさせていくことができるのです。これは、本当は上面が球面になっているカーブガラスを使いたかったのですが、コスト的に難しく、それに近い効果をあげるための工夫でした。

セイコー ルキアブランドが20周年を迎えた2015年に発売された「SSQV014」。ジェルネイルを思わせるダイヤルに、きらりと光るインデックスをセッティングして、上質感のある表情に仕立てられている。

「ジェルネイル」がコンセプトではなかったけれど、仕上がった製品は、まさにジェルネイルの艶めきでした。あとになって調べてみたら、この「透明感の高い層の間にカラー(この場合はピンク)を挟み込む」という構造は、ジェルネイルの仕組みと非常に似ているということがわかりました。

平面を球体っぽく見せようと施した加工が、ジェルネイルっぽさを強めたというのもあるのでしょうね。爪の表面は平面でなく、丸みを帯びていますから。女性用の小さな時計は、爪のサイズにも近いし。いろんな要素が重なって、まさしく、ジェルネイル感に満ちた時計になっているのだと思います。

ジェルネイルの色味と質感

拡大してみると、「ジェルネイル」を彷彿とさせる色味と質感を、より感じていただけることだろう。

追求するのは、その素顔だからこそ映えるメイク。

ソーラー時計が生まれた当時、デザイナーは「透明なプラスチックで、どうやって金属のようなダイヤルを作ればいいんだ?」と考えていたと思います。でも、それから数え切れない試行錯誤があって、今ではまったく違う発想です。それは、「プラスチックでしか実現できない透明感や艶めきで、人びとを魅了する」ということ。いわば「生まれ持った個性(素顔)」を最大限に引き出すメイクなのだと思います。

面白いのは、化粧の流行と同じように、ダイヤルの色にも流行があって、それをデザインの中に取り入れていけることです。また、自分がどんな化粧を好むのかと、どんなダイヤルの時計を好むのかにも、やはり共通項がある気がします。その日の予定でメイクを変えるように、TPOで時計をつけかえる。化粧がばっちり決まったら外出が楽しいように、華やかな時計をつけると気分もあがる。そう思うと、腕時計は私たちにとって「第二の顔」のようなものだとも思えてきます。その大事な「顔」をどう美しく進化させていくか、それが私たちの仕事だということですね。

相原 由佳|Yuka Aihara

果たして、次にデザインする時計は、どんな表情をしてるだろうか?