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Vol.5 すべての色に理由あり。 Vol.5 すべての色に理由あり。

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すべての光を吸い込む闇、ジェットブラック。

これは、プレザージュというブランドの、黒いダイヤルの時計(品番SARX057)です。男性に根強い人気を誇ることもあり、黒いダイヤルの商品は、セイコーのさまざまなブランドで数多く販売されています。でも、この時計のダイヤルの黒さは、ちょっと群を抜いているかもしれません。ここまで「圧倒的な黒色」をしたものは、他のメーカーのものを含めても、かなり珍しいのではないでしょうか?

社内で「ジェットブラック」と呼んでいるのですが、これはジェット機のジェットではなく、石炭のように化石化した樹木のことです。ダイヤルのベースとなる真鍮の板に、まったく光沢のないパサパサの、ものすごくマットな塗料を塗ることで、すべての光を吸い込むような黒色に仕上がっています。

プレザージュ (品番SARX057)の正面写真。黒色ダイヤル、丸型。
プレザージュの中でも人気が高い商品のひとつ「SARX057」。この漆黒のダイヤルと目があった瞬間、あなたの心も、その魅力に強く引き寄せられることだろう。
プレザージュ (品番SARX057)の正面写真。黒色ダイヤル、丸型。
プレザージュの中でも人気が高い商品のひとつ「SARX057」。この漆黒のダイヤルと目があった瞬間、あなたの心も、その魅力に強く引き寄せられることだろう。

航空機に代表される計器に使用されるダイヤルはほとんどが黒色です。過酷な状況下でも視認性を確保するために、太陽光の反射で見えづらくならないよう配慮されているんです。腕時計のダイヤルもスポーティなダイヤルは黒が主流です。その究極のかたちとして、デザイナーの悲願である「真っ黒」を追求して生まれたのが、この「ジェットブラック」です。

音響スタジオの無響室の壁のように、塗装面は拡大するとギザギザしており、すべての光をブラックホールのように吸収してしまいます。しかし、表面に一度傷がついてしまうと使い物にならないこともあり、その扱いづらさから、製造現場は苦労していますけど。

ジェットブラック専用に開発された、白色のインクというのも存在しています。通常の白色インクでは粘性が低く、ジェットブラックの上に印刷すると、にじんで、ぼやけてしまうんです。そこで、粘性を高くした特殊なインクを生み出しました。最高の黒と、それに負けない白。この両方の要素が相まって、ジェットブラックの効果が最大限に生かされていくのです。

考える。その黒は、どこまで黒くなれるのか?

その上でさらに、私たちはこの「ジェットブラック」の黒さを引き立たせるために、ダイヤルを覆うガラスに、特別なものを使用することにしました。「両面スーパークリアコーティング」という独自のコーティングをガラスの両面に施すことで生まれた、光の反射を99%以上抑え、ダイヤルを格段に見やすくするサファイアガラスです。

両面スーパークリアコーティングのガラスを持った写真
ガラスの両面に多層の無反射コーティングを施して、光の反射を99%以上抑える「両面スーパークリアコーティング」。その透明感が、黒を極限まで際立たせる。
両面スーパークリアコーティングのガラスを持った写真
ガラスの両面に多層の無反射コーティングを施して、光の反射を99%以上抑える「両面スーパークリアコーティング」。その透明感が、黒を極限まで際立たせる。

このガラスを使うことで、「ジェットブラック」の黒さがさらに際立っていく。ガラスにもダイヤルにも光の反射がない。まるでガラスが入っていないように見える。圧倒的な視認性の良さも実現しているんです。光の反射というのは、視認性の大きな敵ですからね。

時計は車などと違って、異なるメーカーのものも店頭で手に取って、それを見比べて買うこともできる商品ですよね。そうやって実物を間近で比較検討すると、やっぱり数ある黒の中でも「圧倒的に強い黒」の時計が欲しくなるのではないか?そんな、売り場で時計を手にする人の気持ちや姿を想像したりしながら、最終的にこの「ジェットブラック」の塗料と、この透明性の高いガラスの組み合わせに辿りつきました。

プレザージュ (品番SARX057)と鎌田の写真
時計を至近距離で見つめる鎌田。「ジェットブラックはまったく反射を感じず、吸い込まれそうになるような深い黒」「ガラスにも反射がなくて、直接ダイヤルに触れられそうな感覚です」
プレザージュ (品番SARX057)と鎌田の写真
時計を至近距離で見つめる鎌田。「ジェットブラックはまったく反射を感じず、吸い込まれそうになるような深い黒」「ガラスにも反射がなくて、直接ダイヤルに触れられそうな感覚です」
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